日本の“ショク”が本来持つ力を再生・発展させていく。

四季折々の 「素材を活かした繊細な味わい」 を追求することが和食の真髄です。日本の料理人は出汁や最低限の調味料で素材本来の持ち味を尊重し、甘味・酸味・塩味・苦味に加えて旨味を活かすことで独自の繊細な味を生み出します。豊かな自然に育まれた多様で新鮮な食材(海の幸・山の幸)を用い、その味わいを最大限に引き出す調理法が発達してきました。

日本の食文化は高度な職人技術に支えられています。料理人たちが長年の修行で培った 「受け継がれる職人の技と魂」 により、和食の質が維持・向上されてきました。一流の寿司職人は「飯炊き3年、握り8年」と言われるように10年以上の修行を積むのが伝統であり、この徹底した職人技が日本料理の信頼とブランド価値を築いています

食を通じた人と人との 「心に残るふれあいとおもてなし」 を重んじるのも日本ならではの特徴です。亭主と客の一期一会を大切にする茶道の精神や、店での丁寧な接客、家族で囲む食卓の団らんなど、和食文化には相手を思いやる配慮と感謝の心が息づいています。「いただきます」「ごちそうさま」といった習慣にも、生産者や自然への敬意を払う日本独自のホスピタリティ精神が表れています。

和食は視覚・嗅覚・味覚・触覚・聴覚の 「五感を魅了する美しい演出」 を大切にします。料理は味だけで決まるのではなく、盛り付けの彩りや季節の演出、器の質感、料理が発する音や香りまで含めて美味しさを感じるという考え方です。季節の花や葉で料理を飾り、季節に合った器や調度品を用いるなど、食事の場で自然の美しさや四季の移ろいを表現する工夫が凝らされています。

日本の食文化は 「自然と共生する素材の循環」 を基盤としており、「自然の尊重」の精神に根ざしています。旬の食材を余すところなく活用する知恵が発達し、例えば発酵や乾物による保存技術で食材を無駄にしない工夫が各地で受け継がれてきました。また正月など年中行事と深く結びつき、自然の恵みに感謝して料理を分かち合い家族や地域の絆を深める伝統が育まれています。こうした持続可能な視点が、昨今は世界的にも評価される要素となっています。

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